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iPhoneを越えるAndroid端末は現れないと思う

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「Andoroid端末の契約数がiPhoneを上回った」というニュースは、
決してAndroid端末がiPhoneを凌駕したことを意味するものではないと思います。

Android端末の普及が意味しているのは、
あくまでAndoroid OSというプラットフォーム戦略の成功であって、
決して、iPhoneを越えたということではない。

iPhoneがアメリカで発売されてから3年以上経つというのに、
iPhoneのデバイスとしての美しさに少しでも近付こうとしているものを1つも見かけません。

Appleは、iPhoneの開発者向けに以下のドキュメントを提供しています。
・iPhone Human Interface Guidelines(日本語版もあり)
※入手先は文末を参照

ここには、画面が小さく、リソースに制限があり、
しかし画面を直接触って操作できる特徴的な端末に求めらるものが何か
ということが丁寧に語られています。

これ以外にも、iPad/Macの開発者向けに以下のドキュメントが提供されています。
・iPad Human Interface Guidelines(日本語版もあり)
・Apple Human Interface Guidelines(英語版のみ)
※入手先は文末を参照

これらは、ZEROX PARCの研究者に刺激を受けて1983年に発表されたLisaから脈々と続く、
Appleのグラフィカルユーザインタフェース研究の歴史そのものです。
おそらく、越えられない壁がここにあるのだと思います。

とても素晴らしいドキュメントなので時間があればすべて読んでほしいのですが、
それなりにボリュームがあるため、ここで語られている重要な言葉をピックアップして
少し紹介させていただきたいと思います。

ヒューマンインターフェイスの原則:優れたユーザインターフェイスの作成

優れたユーザインターフェイスは、デバイスの機能ではなく、
ユーザがどのように考え、どのように作業するかに基づいた、
ヒューマンインターフェイス設計の原則に従っています。

メタファ

可能であれば、アプリケーションのオブジェクトやアクションを
実世界でのオブジェクトやアクションになぞらえてください。

アプリケーションを設計する際には、iPhone OSに存在するメタファに注意し、
それらを再定義しないようにしてください。

ただし、選んだメタファが大半のユーザに認識される可能性が高いのでなければ、
それらを含めることで混乱が減るどころか増えます。

直接操作

直接操作の原則に従うことの利点は、
ユーザが自分が行うアクションの結果を容易に想像できることです。

直接操作の感覚を高めるために、次の点に注意してください。
・ユーザがオブジェクトに対してアクションを実行している間、オブジェクトを画面に表示し続ける
・ユーザのアクションの結果は、すぐに表示反映される

参照とポイント

より制限の少ない入力をユーザに求めるのではなく選択肢を提示することで、
ユーザはアプリケーションの操作方法を憶えることではなく、
アプリケーションでタスクを達成することに集中できます。

フィードバック

ユーザは、アクションの結果の確認に加え、
コントロールを操作したときの即座のフィードバックや、
時間のかかる処理のステータス報告を必要とします。

アプリケーションは、ユーザによるすべてのアクションに対して、
目に見える何らかの変化で応える必要があります。

たとえば、ユーザがリスト項目をタップしたら、
そのリスト項目を短時間だけハイライトさせます。

音によるフィードバックも役に立ちますが、ユーザはiPhone OSベースのデバイスを
音が聞こえない場所やサウンドをオフにする必要がある場所で使用する可能性があるため、
音を主たるフィードバックの方法または唯一のフィードバックの方法にはできません。

2~3秒以上継続して処理が行われる場合、アプリケーションはその間、
経過進捗を表示し、妥当と考えられる場合には説明メッセージを表示すべきです。

アニメーションは、ユーザにフィードバックを提供する優れた方法です。
ただし、それが妨げにならず、意味がある場合に限ります。

ユーザによる制御

ユーザがアクションの開始や制御を行えるようにしましょう。

アクションを単純かつ簡単なものに保つことで、
ユーザがアクションを容易に理解し記憶できるようにします。

可能な限り、ユーザがすでに慣れ親しんでいる
標準的なコントロールや動作を使用してください。

iPhoneアプリケーションの設計:プロダクトの定義からブランド設定まで

プロダクト定義ステートメントの作成

アプリケーションの設計を開始する前に、
そのアプリケーションが何をするのかを正確に定義することが重要です。

はじめに、時間をかけて対象利用者を定義します。
対象利用者は経験のあるユーザでしょうか。それとも初心者でしょうか。
本格的なユーザでしょうか。それとも一時的なユーザでしょうか。
特定のタスクについて支援を必要としているのでしょうか。
それとも娯楽を探しているのでしょうか。

ユーザの特徴としては次のようなものがあります。
・ユーザは移動する。
・ユーザは、アプリケーションをすばやく開いて、役に立つコンテンツをすぐに見たいと考えている。
・数回タップするだけでアプリケーションで物事を達成できる必要がある。

今度は、対象ユーザをほかのすべてのiPhone OSユーザと隔てる特徴は何かを自問してください。
対象ユーザは、ビジネスマンでしょうか、ティーンエージャーでしょうか、それとも退職者でしょうか。
対象ユーザはアプリケーションを毎日の終わりに使用するでしょうか。
それとも、電子メールをチェックするたびでしょうか。
あるいは空き時間が少しあるたびに使用するでしょうか。

優れたiPhoneアプリケーションの特徴を組み込む

優れたiPhoneアプリケーションは、ユーザが求める体験を提供しながら、
ユーザがまさに必要とすることを行います。

■簡潔さと使いやすさを作り込む

簡潔さと使いやすさは、すべてのタイプのソフトウェアにとって基本的な原則です。
ユーザは、アプリケーションの使いかたがすぐに分からなければ、
競合他社のアプリケーションに移ってしまい戻ってこないでしょう。

簡潔さと使いやすさを作り込むためのガイドライン
・使用方法を明白にする
・トップダウンで考える(頻繁に使用される情報を画面上部近くに集中させる)
・必要な入力を最小限にする
・情報を簡潔に表す
・指先サイズのターゲットを提供する

■主たるタスクに焦点を当てる

焦点をはずさないようにする良い方法の1つは、
それぞれの文脈において何が最も重要かを判断することです。

それぞれの画面で何を表示するかを決めるとき、
「これはユーザがこの場面で必要としている重要な情報または機能なのか」
を常に自分に問いかけてください。

■効果的なやり取り

ユーザは、要求が処理されているかどうか、および自分のアクションによって
データが失われたり、その他の問題が生じたりする可能性がある場合に、
そのことを知る必要があります。

とは言うものの、やり取りが多すぎ(たとえば、それほど深刻でない状況で
ユーザに警告したり、あまりに頻繁に確認を求めることなど)に
ならないようにすることも重要です。

アニメーションは、ユーザのタスクの妨げになったり、
作業を遅らせたりしない限り、効果的にやり取りするための良い方法です。

ユーザとのすべてのテキストベースのやり取りでは、
ユーザを中心に考えた用語を使用してください。

ジェスチャを適切にサポートする

指を使ってデバイスを操作することには、実用的な利点があります。
つまり、指はいつでも使うことができ、さまざまな動きが可能な点です。
また、マウスなどの外部入力デバイスなどでは得られない、
デバイスに対するじかの接触感とつながりを感じることができます。

ただし、指には大きな短所が1つあります。
つまり、指は、そのサイズや形状、指の持ち主の器用さにかかわらず、
マウスポインタよりもかなり大きいということです。
ディスプレイ画面に対して、指はマウスポイントほど正確にはなり得ません。

アプリケーションを見つけやすく使いやすいものにするには、
必要となるジェスチャを、最も慣れ親しんだ動作である
タップおよびドラッグに限定するようにしてください。
また、スワイプやピンチオープンなど、あまり一般的でないジェスチャが、
アクションを実行する唯一の手段とならないようにしてください。
1つか2つの追加のタップが必要となるにしても、あるアクションを
実行するための方法として単純かつ簡単な方法が必ずなければなりません。

多くのアプリケーションでは、新しいジェスチャを定義しないようにすることも
同じくらい重要です。

ブランド設定要素を慎重に組み込む

ブランド設定が最も効果的なのは、ささやかで控え目に表現されている場合です。
ユーザがiPhoneアプリケーションを使用するのは作業を行うか楽しむためであり、
強制的に広告を見せられていると感じたいのではありません。

したがって、ブランドの色やイメージを、
洗練された、控え目な方法で組み込むように努める必要があります。

例外は、ブランドに注目を集める必要があるアプリケーションアイコンです。
ユーザはアプリケーションアイコンを頻繁に目にすることになるので、
見映えとブランド認知のバランスに時間を割くことは重要です。

まとめ

iPhone開発者向けのドキュメントですが、
その内容はすべてのスマートフォン開発に共通するものです。

おそらく、ここに書かれたことを実現するためには、
かなりシビアなハードウェア設計も求められるでしょう。

結局、ここに書かれていることを忠実に体現できている端末が
iPhoneしかない、ということなのだと思います。

Appleはここまでくるのにすでに40年近くを費やしているわけで、
それを4、5年で追いつこうということ自体無理があるのかもしれません。

Android端末はこれからも普及していきシェアを拡大していくと思いますが、
あらゆるサードパーティが参加できるオープンな市場の性格から言って
ハードもソフトも循環サイクルが早く成熟期間が短いため、今後、
デバイスとしての成熟度でiPhoneを越える端末が現れることはないと思います。

ドキュメントの入手先

日本語ドキュメント
>> iOS Refernce Library (日本語)
>> iPhoneヒューマンインターフェイスガイドライン(pdf)
>> iPadヒューマンインターフェイスガイドライン(pdf)

英語ドキュメント
>> iOS Refernce Library
>> iPhone Human Interface Guidelines
>> iPad Human Interface Guidelines
>> Apple Human Interface Guidelines

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